不倫をしてしまい、配偶者から慰謝料に関する示談書(契約書)の作成を求められてしまった方のために、示談書の法的効力や作成の方法、注意点についてご紹介します。
目次
そもそも示談書とは「和解書」・「合意書」・「誓約書」とも呼ばれることもあり、タイトルはさまざまですが、慰謝料など問題を解決するために取り交わす約束事を記載した契約書を指します。
不倫問題を解決するために、「慰謝料を支払う」「相手と再び会ったときは違約金を支払う」などの約束を口頭した場合でも、法的に見ると契約は成立したことになります。
しかし、口頭で取り交わした約束は、証明することが難しく、後から言った、言わないと問題が生じるために、問題解決の事実を証明するための示談書を作成します。
一般的に、示談書には次のような内容を含みます。
示談書は加害者(不倫をしてしまった側)と被害者(不倫をされて傷ついた側)が、不倫問題を解決するために行う約束を記したものになります。
そのため、「慰謝料を支払う」といった加害者が行う約束だけでなく、「第三者に口外しないこと」「迷惑行為を行わないこと」「示談書に記載された以外の一切の要求をしないこと」などの被害者が行う約束も含みます。
たまに、被害者側が「誓約書」というタイトルで、加害者のみが行う約束を示した契約書を作成し、署名捺印を求めるケースがあります。このような一方的な約束を示す契約書は、問題の解決としては不十分であるため、加害者と被害者の双方の約束を含む契約書を作成するべきです。
自分が不倫をしていた立場にある場合、示談書は自分にとってデメリットしかないように感じてしまいがちです。
しかし、メリットもあるので確認しておきましょう。
約束事をした際に口約束のみで済ませてしまうと何かとトラブルが起きます。慰謝料に関する口約束のトラブルは「口約束で毎月5万円ずつ支払うと約束してくれたのに、その約束はしていないと言われてしまった」というように受け取る側が損するものが多いです。
しかし反対に、支払う側が「毎月3万円ずつ支払うことに納得してくれたはずなのに5万円の支払いを約束したと言われ困っている」といったトラブルに頭を抱えることもあります。
示談書を作成しておけばこういった心配もありません。
具体的な条件を書面に残しておくことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。一度納得してサインと押印をしたなら、もし気が変わったりして内容の変更を希望する場合は、相手の了承がなければ変更することはできません。
示談が成立した後に、配偶者から「やっぱり毎月あと3万円多く支払って」と言われても、配偶者は「示談書に記載したこと以外の請求をしないとを約束しています」ので、毅然と断ることができます。
示談書には、お互いに問題で起きたことや相手について知り得たことを第三者に漏らさない約束を明記します。家族や友人、インターネットの書き込みなども含め守秘義務として定めます。
示談書を作成するように相手から求められた場合は、法的な知識のない方が一から自分で考えて示談書を作成することは難しいと思います。
一つ目の方法は、インターネット上に無料で公開されているひな形(テンプレート)を利用することです。
ただし、ひな形にある内容が、自分の問題に必ずしも合っているものとはかぎらないため、必要な項目が備わっているものであるか確認し、不足している項目は自分で追加するなど編集を行いましょう。
2つ目の方法は、行政書士や弁護士など法律の専門家に書面の作成を依頼することです。
将来のトラブルを避けるため、自分の状況に合わせて必要な項目を提案してもらい、安心の内容で作成することができます。
書面が完成したら相手に内容を確認してもらい、問題がなければ、当事者が日付の記入・署名捺印を行い、それぞれ1通ずつ保管します。これで示談は成立です。
示談書を作成する際には、次のことに気をつけておかなければなりません。
よくあるのが、事実ではないことを書かされてしまうこと。不倫の事実について、相手との認識が違い、実際よりも長い不倫期間の記載を強要されたり、肉体関係がないにもかかわらず、肉体関係があると記載を強要されたりすることがあります。
しかし、事実ではなくても、示談書に書かれた事実は当事者が認めたことになりますので、後から撤回することは難しくなります。
事実ではないことは記載してはいけません。
不倫の慰謝料は高額であり、相応の償いをすることになります。しかし、慰謝料の支払いをした後も、相手の嫌がらせや干渉が続き、問題が解決しないケースもあります。
そのようなトラブルを防ぐため、「秘密保持」「当事者間の連絡の禁止」「嫌がらせや迷惑行為の禁止」「清算条項(今後いかなる請求もしないことの約束)」を明記し、問題は全て解決したことを確認、約束をすることが大切です。
相手に作成を促され渋々応じる人もいますが、慰謝料を支払う側にとっても、契約書は自分の権利を守る武器にもなり得ます。逆に相手が作成してきたものが十分な内容ではなかった時、加害者が修正をお願いするのは難しいこともありますので、自分で作成ができることはメリットとも考えられます。
ただ、示談書の内容が十分なものであるか不安が少しでもある場合には、示談書は自分が作成された場合でも、相手が用意した場合でも、法律の専門家に内容の有効性の確認だけを依頼することもできます。費用はそこまで高額ではありませんので、ぜひご利用を検討されてみてください。