不倫相手から手切れ金の請求を受けた際の支払義務や対処法について、事例を基に解説します。手切れ金は関係の解消に一定の効力を発揮するものの、法的に支払義務が生じるものではありません。手切れ金の請求を受けた際には、法律の専門家に相談し、支払う意味について理解した上で支払いを了承、もしくは拒否することが望まれます。
目次
ご相談の経緯についてご紹介します。
ご相談者様は、出会い系サイトで知り合った女性と約1年間にわたり不倫をしていた40代・既婚男性です。身辺整理のため関係の解消を申し出たところ、不倫相手から手切れ金を請求されたという経緯でした。
ご相談者様の疑問は「不倫相手からの手切れ金請求に法的支払義務はあるか」です。不倫をしていたことは事実なので、法的義務があるのであれば支払わなければならないと考えています。手切れ金は、支払わなければならないものなのでしょうか。
手切れ金を支払う義務はありません
次のように、手切れ金に法的な支払義務はありません。
不倫は関係を解消しても、法的に保護されるものでありません。不倫は、既婚者である配偶者の権利や利益を侵害する共同不法行為です。公序良俗に反しているため、不倫関係は法律の保護を受けることはできません。
不倫関係の解消による手切れ金の請求は、法的に認められません。一方的に関係を解消すると債務不履行などで損害賠償責任を負う婚姻関係とは大きく異なり、不倫関係は法律の保護を受けられないことから、関係を解消したとしても損害賠償責任は生じません。仮に、裁判で不倫関係解消による手切れ金を慰謝料として請求されたとしても、原則として認められることはありません。つまり、手切れ金を請求されたとしても、法律上の支払い義務はありませんが、独身と偽って関係を続けてきた場合や、将来の結婚を約束していた場合などでは、貞操権侵害による慰謝料請求を認められる可能性があります。
穏便な関係解消のため、自分の意思で手切れ金を支払うことはできます。後々のトラブルを避けたいという場合は、別れを告げられた側の気持ちに配慮して手切れ金を支払うことも有効でしょう。手切れ金の支払いは法的義務に左右されるものではなく、関係解消の円滑化を目的として検討するべきです。
手切れ金は、条件を整理したうえで払いましょう。条件を整理せずに払うと、後にトラブルにつながることがあります。手切れ金を支払った後に、受け取っていないと主張されるなどの可能性があることから、手切れ金を支払う際には、支払いについて記載した合意書を作成することが重要です。不倫の事実を内密にしたいなら口外禁止の条項を、今後一切の関わりをもちたくないなら接触禁止の条項を記載することもできます。手切れ金は、必要な条件を整理してから払いましょう。
不倫関係解消に伴い手切れ金を請求されたものの、支払いに疑問を感じる方は、法律の専門家に相談するべきです。手切れ金に法律上の支払い義務はないことから、必要性について慎重に判断することが重要。判断に悩む方や貞操権侵害などによる慰謝料を請求された方は、法律の専門家に相談するとよいでしょう。支払義務の有無や請求金額の妥当性の判断に加え、最善の解決法を仰ぐために活用できます。