慰謝料請求された!求償権が行使できる具体例と想定されるトラブル例 - 慰謝料請求ホットライン

慰謝料請求された!求償権が行使できる具体例と想定されるトラブル例

慰謝料を請求されてつらい思いをされている方、言われるまま支払おうとしていませんか?早い解決のために誠意を見せることは大事なことですが、必要以上に支払うことはありません。不倫に至った責任は、あなた一人が負うべきものではないからです。慰謝料に今後の生活を支配されないよう、支払う前にこちらをお読み下さい。

求償権を知らずに支払いに応じないで!

不倫はしたけど悪いのは自分だけ?→そんなことはありません

最初から悪気があって略奪不倫をした方なんて皆無ではないでしょうか。
最初は独身だと聞かされていた、好きになったらどうしても引き返せなかった、相手からアプローチをかけてきた、夫婦関係が破綻していると聞かされていた…など不倫に至った理由は様々。

それなのに、自分を責めるあまり全責任を負わされそうになっていませんか?
交際相手はのうのうと家庭に戻り、別れさせられた自分だけが慰謝料請求されている。
よくあるケースですが、これは大変おかしなことです。
不倫の責任は、あなただけが負わなければならない物ではないのです。

不倫の責任を浮気相手にとらせるのは日本くらい!?

日本では、「とった」「とられた」と浮気者そっちのけのバトルになりますが、どう考えても一番悪いのは家庭がありながら浮気をした当人。
アメリカ、イギリス、ドイツなど、欧米のほとんどの国では不倫相手へ慰謝料を請求することはできません。
夫なり妻なりを傷つけたのは浮気をした配偶者なのだから、浮気相手へ慰謝料を求めるのは報復行為に過ぎず不正義である、というのが世界標準の考え方です。

不倫相手への慰謝料請求を認めると、夫婦が誰かを陥れてお金を巻き上げる詐欺(いわゆる美人局)が可能になるため、これを認めないという実利的な側面もあります。
夫婦が結託していれば証拠をとるのはたやすく、その欺罔行為(騙す意図があったか)を証明することは困難です。詐欺の温床をそのままにすれば、社会秩序が乱れます。

また、欧米には「浮気をしている時点で、夫婦関係が破綻しているも同然」という考え方もあります。破綻したから浮気したのか、浮気したから破綻したのか?正解はありませんが、浮気相手は第三者。夫婦問題に根本的には関係ないとも言えます。

一方日本では、浮気相手に慰謝料を請求することが認められているため、離婚せずに夫婦が関係を修復した場合、配偶者が浮気相手だけに慰謝料を請求することが当たり前に行われています。
「そういうものだ」と思われているかもしれませんが、これは誤りです。
日本の法律だって、浮気をした配偶者に責任があることはちゃんと認めているのです。

慰謝料は、浮気をした既婚者と、浮気相手の二人が分担するのが筋

不貞行為は一人ではできません。
日本で不貞行為は、法的には「共同不法行為」と定義されています。
共同不法行為とは、複数の人間の関与によって権利が侵害される行為のこと。
損害賠償については、民法719条に次のように定義されています。

第719条 1.数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

浮気者と浮気相手、両方が責任をとりなさいとちゃんと書いてあるのです。
損害賠償の割合は、基本的には等分または浮気をした配偶者の方にやや多く認められることが多いです。ただし、浮気相手が一方的にアプローチをかけたり、相手の意思に背いて妊娠したりさせたりした場合は浮気相手の賠償の割合が大きくなります。

一人で支払わされた場合、相手の負担分の返還を求めることができる

共同不法行為による慰謝料を一人だけで支払わされたのであれば、支払ったあとから共同不法行為者に対し、相手の負担分を求めることができます。
この権利を、「求償権」と言います。

不貞行為の慰謝料を支払う際に、求償権は重要なカードとなります。
これを知らずに言われるままに支払ってしまわないようにしましょう。

求償権を行使する時の注意点

求償権を盾に一方的に支払いを拒むことはできない

本来は、まず不法行為によって損なわれた全体の損害を明らかにし、その責任の割合を決めないと、浮気した配偶者と浮気相手が負担する賠償額は出せないはずです。
しかし、多くの場合、慰謝料請求書には「慰謝料として100万円請求する」というように書かれているだけです。
金額の根拠は曖昧です。漠然と大きな数字を言われると腹いせにしか思えず腹が立ちますが、腹を立ててはいけません。

次のように回答するのは最もいけない例です。

「私には求償権があります。また、民法719条にもある通り、私には請求額の半分しか支払う義務はありません。50万円でしたら支払います。」

慰謝料請求されたら、相手の神経を逆なでしないように上手に交渉するのが何よりも肝心。これでは、相手の感情を害し、誠意がないと受け取られてしまいます。また、この主張の仕方は、法的にも誤りが含まれています。

求償権は、「支払わなくてもいい権利」ではない

ややこしいのですが、求償権とは「支払わなくてもいい権利」ではなく「共同不法行為による損害賠償を一旦支払った後で、共同不法行為者に対してその負担分を求めることができる権利」です。
つまり、弁済前には権利は発生しないことになります。

また、共同不法行為による損害賠償は、ホテルの部屋で美術品を壊したりした場合の損害賠償とは、やや性質が異なります。もう一度民法719条を見てみましょう。

第719条 1.数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

問題となるのは、「各自が連帯してその損害を賠償する」という部分です。「連帯して」とは、自己負担分だけ責任を負い、その他の部分についての責任が免除されるという意味ではありません。
法的には、行為者同士が不真正連帯債務関係にあるという意味です。

具体的に言うと、加害者である不法行為者は各自が全額の支払い義務を負っているということです。
被害者からすれば損害を賠償してもらうことが優先であり、その分担は行為者同士で話し合えばよいことで、誰がどれだけ支払おうと知ったことではないのです。
ですから、一人で全額を賠償する責任があるのです。

「求償権が使えない!」よくあるトラブル

ケース1:あなたのぶんしか請求していないと言われてしまった

相談内容

慰謝料請求された相談者:30代独身女性
浮気相手:30代既婚男性
慰謝料請求した人:30代既婚男性の妻
慰謝料請求額:100万円

内容:
相談者は職場の男性社員と不倫をし、男性の妻から100万円の慰謝料を請求されました。男性は妻と関係修復して、離婚しないことに。 求償権を知り、後から請求するものであることもわかったので、相談者は一括で100万円を支払いました。 後日、交際していた既婚者男性に半分の50万円を支払うよう連絡しましたが、男性はこれを拒否。 「妻の被った精神的苦痛に対する損害賠償は200万円であり、最初から浮気相手には半分の金額しか請求していない。よってあなたに求償権はない」と反論されてしまいました。

解説:
特に書面が残っていなくても、実はこのような主張は可能です。 やり直すと決めて夫婦が談合すると、家計を最優先に考えて求償権を行使されないよう対策を練ることはよくあることです。 求償権を行使すると連絡を受けた後で、夫から妻へ慰謝料を支払ったとしても、その主張が通る可能性があります。 この例では、あらかじめ夫から妻の銀行口座へ100万円貯金を移動し、慰謝料についての協議書も作成していました。

どうすればよかったのか?

最初から求償権がある(どうせ半額返ってくる)と思い込んで支払いを約束するのは危険だということです。
慰謝料を提示された際に、その金額が慰謝料の総額かどうかを確認し、書類の作成時に盛り込んでもらうことはできます。
総額でなく一人分の負担であるということなら、求償権は発生しません。総額であるなら、求償権が発生します。
ただし、求償権を行使するつもりであることを相手に告げてしまうと、そのぶんを見込んで多めに請求されてしまいます。
それでは求償権なんて役に立たない権利ではないかと思われるかもしれませんが、求償権の効果的な使い方については、このあと解説します。

ケース2:求償権が時効を迎えてしまった

相談内容

慰謝料請求された人:40代既婚男性
浮気相手:40代既婚女性
慰謝料請求した人:50代既婚女性の夫
慰謝料請求額:200万円

内容:
相談者は半年間、既婚女性と交際しました。女性は「夫とは別居中。あなたと再婚したい。離婚するまで待って」と訴えていました。 相談者様もそのつもりで離婚を待ちましたが、半年経っても週末は会ってもらえない関係のまま。別居も嘘とわかりました。 相談者様が女性に別れを告げると、女性の夫から200万円の慰謝料請求。相談者様は女性と縁を絶ちたく、満額を支払って求償権も行使しませんでした。 それから10年経ち、SNSで女性の近況を知った相談者様は、この女性が当時似たようなことを繰り返していたことを偶然知りました。 ネットでは被害者を名乗る人が女性の実名を出して糾弾しており、相談者の場合も美人局ではないかと思われました。証拠はなく詐欺として訴えることができないので、せめて求償権を行使して、慰謝料の一部でも取り返せないかという相談でした。

解説:
この場合、求償権を行使することができません。求償権の消滅時効は10年と決められているからです。 消滅時効とは、権利がなくなってしまう期限のことです。正当な権利がなくなってしまう時効がなぜあるのか?については、次の三つの説明ができます。 ひとつは、民法では現在長く続いている状況を尊重するため。ひとつは、権利があるにも関わらずそれを行使しない人を保護する必要はないため。ひとつは、あまりに過去の権利関係については立証が困難なためです。

どうすればよかったのか?

相談者様自身が求償権を知りながら行使していないので、納得の上の決断です。残念ながらどうすることもできなかった例です。
強いて言えば、200万円の慰謝料は相場からすると高額であり、交渉せずに満額を支払ってしまったのはよくありませんでした。
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償です。損害賠償とは損害を補填するためのものですので、損害以上の請求は認められませんし、そうして得た金銭は不当利得と呼ばれます。不当利得に対しては、支払った側は返還請求権を持ちます(ただしこの権利も10年で時効となります)。
たとえ不貞行為を働いたのが事実であっても、相手の要求通りの金額を支払うことがすなわち正しいことではないので、慎重に判断を。

ケース3:求償権を放棄すると約束させられた

相談内容

慰謝料請求された人:20代独身女性
浮気相手:30代既婚男性
慰謝料請求した人:30代既婚男性の妻
慰謝料請求額:60万円

内容:
相談者は、入社したばかりの会社で、職場の上司が既婚者であることを知りながら、出張先で関係を持ってしまいました。交際が始まりましたが、関係は一ヶ月で突然終わりました。 上司の妻から60万円の慰謝料を請求されたためです。 示談書を作成する際に、「求償権を行使しない」という一文がありましたが、気づかずにサインしてしまいました。 会社に慣れてくると、この上司が社員と不貞行為をするのは一回目ではないことがわかりました。相手はいつも新入社員の女性。その都度、妻が慰謝料を請求しては示談ということを繰り返していました。騙されたようで納得いかないので、慰謝料を取り返せないかという相談でした。

解説:
「求償権を行使しない」「求償権を放棄する」などとある示談書にサインした場合、あとから求償権を行使することはできません。 求償権は、このように請求相手に放棄すると約束させることができます。公正証書にして公証役場に提出している書類は裁判所の判決文と同じ効力を持つので、覆すことはできません。

どうすればよかったのか?

求償権は正当な権利なので、放棄することにメリットがない場合はサインしてはいけません。
どんな契約書も、しっかり目を通しましょう。慰謝料請求の示談書は、保険の約款のように長大なものではありません。短い文章ですのでしっかりチェックし、不明な点があれば確認しましょう。”

求償権はどのように使うのがよいのか?

上の求償権のトラブルの例を見ると、10年の時効、放棄させられる可能性についてはよくわかりますね。
問題は、ケース1の場合です。
慰謝料請求書には、請求金額が慰謝料の満額であるかどうかが書かれていることは少ないです。そこに気づかず後から「あなたには満額請求したわけではない」と主張されると、求償権を行使できません。
支払ってしまった後でしか権利が発生しないのに、後で求償権が確実に行使できるかどうかはわからないので、実際に求償権あてにして支払うのは現実的な方法とは言えません。

それでは求償権はどのように使えば良いのかを解説します。

求償権の放棄を条件に、慰謝料の減額交渉する

求償権は弁済後にしか発生しません。しかし、求償権を行使しないことを約束して、減額交渉することはできます。
求償権はこのように交渉のカードとして使うのが有効です。

支払いを受けたとしても請求相手に求償権が残っていれば、それを行使される恐れがあります。その際に、金額で揉めれば訴訟にならないとも限りません。
1,000万円、2,000万円という金額ならともかく、不貞行為の慰謝料は数十万円からせいぜい300万円程度が相場です。訴訟に発展させるとお互いにデメリットしかありません。
早期に解決したいのは被害者にとっても同じです。
ですから、求償権の放棄を約束することで早期に解決できるということを伝えれば、相手が受け入れる可能性は高いです。

慰謝料の減額交渉の例

100万円の慰謝料を請求された場合の回答を修正してみましょう。

×「私には求償権があります。また、民法719条にもある通り、私には請求額の半分しか支払う義務はありません。50万円でしたら支払います。」


○「100万円の慰謝料であることに同意します。早期に解決するため、求償権を放棄し、後日これを行使しないことを約束します。その代わり、慰謝料は50万円支払うことで解決させていただけないでしょうか。」

どちらも結局「50万円しか払わない」と言っているのですが、印象はまったく異なります。
上は発生していない権利を盾にしているので筋が通りませんし、相手の感情を害するでしょう。

相手の心情を汲んで交渉するのが大事

受け取ったお金の中からでも、被害者が加害者にお金を払うのは心情的にも苦痛なものです。
一度100万円受け取って50万円を加害者に返すのと、最初から50万円しか受け取らないのでは、受け取る金額に代わりがなくても、感情的には後者の方が受け入れやすいのです。

慰謝料請求された場合は、相手の感情を害さないように立ち回らなくてはなりません。そうしたちょっとしたやりとりを、法的根拠に基づいて行うのが、プロの技と言えます。
もし交渉に不安があれば、専門家に任せると安心です。

求償権についてのまとめ

求償権とは、共同不法行為によって発生した慰謝料の支払いについて、支払い後に、共同不法行為者に対してその負担分を請求できる権利。不貞行為によって慰謝料請求されたら、不貞相手に対して負担を求めることができます。しかし、相手夫婦が離婚しなかった場合は夫婦で結託して求償権を認めない工作をすることが可能なので、求償権を行使することは現実的ではありません。
求償権の有効な使い方は、これを放棄することを条件に慰謝料の減額交渉をすることです。交渉はプロに任せると安心です!

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