証拠なしの状態で不倫慰謝料を請求された方に向けて、不倫の事実を否定することの是非や請求後の対処法を解説しています。
示談交渉においては証拠なしで不倫慰謝料の請求を行うことは可能ですが、裁判では請求者に立証責任が生じるため証拠なしでは慰謝料の請求は認められません。
しかし示談交渉において、請求者が証拠を持っていないと判断し、不倫の事実を全面否定することは避けるべきで、慎重な対応が望まれます。
目次
不倫で慰謝料の支払義務が生じる要件は、不貞行為により夫婦が平穏に暮らす権利を侵害することです。
「不貞行為」とは、当事者の自由意思によりパートナー以外の異性と肉体関係をもつことであり、婚姻関係・内縁関係・婚約関係にある男女が、パートナー以外の異性と性的関係をもたないとする「貞操義務」を侵害する行為のことを指します。
「貞操義務」を侵害する行為は「故意」や「過失」により「相手に損害を与える行為」であり「不法行為」と見なされます。
不倫慰謝料の支払義務は、故意及び過失のある不貞行為により、貞操義務を侵害する不法行為を行ったときに生じます。
不倫の慰謝料請求が行われる流れは次のとおりです。
1.示談交渉
2.示談成立/示談不成立
3.裁判/請求の辞退
4.判決
慰謝料請求は示談交渉から始まり、示談が成立すれば交渉時の請求金額が慰謝料の金額となりますが、不成立であれば裁判もしくは請求の辞退へと進み、裁判が行われた場合は判決により請求金額が決定される流れとなります。
慰謝料請求における証拠の役割は、裁判官に不倫の事実を証明するためのものです。
不倫の証拠とは、裁判において第三者が客観的に「不貞行為が確実に行われた」と判断するためのものであるため、第三者により不倫の事実が判断されない示談交渉の段階では必要とされません。
しかし裁判を有利に進めるため、基本的に請求者は証拠の有無を内密にすることがほとんどです。
そのため、証拠なしだと踏み示談交渉で不倫の事実を否定したとしても、裁判へと進んだ場合、裁判の場で初めて決定的な証拠が提示される可能性もあります。
証拠はあくまでも裁判官に対し不倫の事実を証明するためのものであり、示談交渉では必要とされませんが、証拠を提示する時期は請求者が自由に決められることから、証拠なしであると決めつけることは性急です。
証拠なしで不倫慰謝料請求を行うことは可能ですが、裁判では請求が認められる可能性が低くなります。
請求者は、示談交渉においては証拠なしの状態で慰謝料を請求できます。
示談交渉では、請求者と支払者の双方が請求金額に合意をすることにより、慰謝料の支払いが決定します。
つまり、証拠の有無を問わず「双方の合意」があれば請求が成立するため、証拠なしの状態でも慰謝料の請求は可能です。
もし慰謝料に関する事柄が示談交渉により決定されるのであれば、全く証拠がない状態でも請求することができます。
裁判では証拠なしの状態では裁判で勝訴することは難しいと考えられます。
前述の通り、裁判では第三者が不倫の事実を判断することから、客観的な「証拠」となり得るものが必要となるためです。
裁判においては、慰謝料を請求する側に事実を立証する「立証責任」があることから、請求者は不貞行為が行われた証拠を提示し、事実を立証する責任を負います。
そのため、請求者が証拠を握っていない状態で慰謝料を請求する際には、示談交渉が不成立となった場合、請求の辞退を行うケースも少なくありません。
証拠なしの状態で裁判へと進んだ場合は、請求者が立証責任を果たせないことから、請求が認められる可能性は低くなります。
不倫の証拠となり得るものは次のとおりです。
・性交・ラブホテルの出入りなどが記録された写真・動画
・不倫の事実を認めた会話を記録した音声データ
・肉体関係を持ったことを強く推認させる連絡履歴
・調査会社や探偵社の調査報告書
上記の4つが不倫の証拠として代表的となりますが、その他、肉体関係を持ったことを記録した日記や手紙、ラブホテルの領収書、不貞行為を推認させるクレジットカードの明細なども証拠となり得ます。
証拠なしの状態であっても、次の4つの理由により、不倫の事実を否定することは避けるべきです。
道義的観点から考えると、証拠なしであっても、不倫を認めて誠実に謝罪するべきです。
不法行為とされる不倫は夫婦が平和に暮らす権利を侵害し、被害者に精神的苦痛を強いる行為であることから、人として誠実に謝罪し、償うべきだと言えます。
証拠の有無に関わらず、人として過ちを犯し、精神的苦痛を強いたことに対する誠実さを示すためには、不倫を否定せず謝罪することが望ましいでしょう。
不倫の事実を否定することは、裁判において慰謝料増額要因となり得ます。
虚偽により不倫の事実を否定する対応は、裁判において「不誠実で悪質である」と判断されやすくなるため、慰謝料増額に繋がりやすくなる要件です。
裁判に進むことを前提とするなら、不倫の事実を否定せず、誠実な対応を心がけることが得策となります。
不倫の事実を否定することで、問題が拡大する可能性が高まることも否定するべきでない理由のひとつです。
否定により請求者の怒りが助長されれば、職場・家族・近隣住民への不倫の事実の告発が行われるなどのトラブルに繋がりかねません。
問題を大きくすることなく穏便な解決を望む場合は、証拠なしであっても不倫の事実を全面否定することなく、請求者の感情に配慮しながら慎重に対応することが重要です。
慰謝料請求時に証拠なしであっても、後に証拠が提示される可能性も捨てきれません。
請求者が証拠の有無を明かさない場合に加え、請求後に確固たる証拠が見つかるというケースもあることから、証拠なしであるからと不倫の事実を全面否定すると、不利な立場となる危険性もあります。
後に証拠が提示される可能性を、常に念頭に置いておくべきです。
証拠なしの状態で不倫の慰謝料を請求された際には、次のように対処してください。
不倫の事実を明確に認めることは、請求者に証拠を与えることになるため避けてください。
請求者が証拠の存在を明らかにしていない場合、自ら不倫の事実を認めて確固たる証拠を提供する必要はありません。
請求者が裁判において提示できる客観的証拠を保有していなければ、不倫の事実を認めないことで、慰謝料の支払いを免れる可能性もあります。
不倫慰謝料の請求を受けた際には、請求者が保有している証拠の内容を確認することも大切です。
証拠なしだと思われても、請求者が証拠を隠し持っている可能性は捨てきれません。
また反対に、効力が不十分な証拠を保有していることも考えられます。
不倫関係を否定した後に、裁判で確固たる証拠を提示されれば慰謝料の増額につながる可能性もあることから、相手が保有している証拠の内容を確認してから、証拠の内容にあわせて対応を進めていくことが重要です。
不倫慰謝料の請求を受けたら、法律の専門家の無料相談窓口に相談し解決法を探ることも欠かせません。
専門家に相談をすることで、証拠の有無、証拠の内容などの状況を詳しく説明した上で、現状に相応しい適切な解決策を知れるようになります。
証拠の有無、内容によりその後にとるべき対応は大きく異なるため、法律の専門家の無料相談窓口に相談をし、慎重に対応していくことが望ましいと言えます。
証拠なしの不倫慰謝料請求に対しては、何よりも「慎重な対応」が求められます。
証拠がないと思われても、請求者が証拠の有無を明かしていない、後に証拠が提示されるなどの可能性もあることから、まずは証拠の有無と証拠の内容を確認し、確認した内容にあわせて適切な対応をとる必要があります。
個々の状況にあわせた適切な対応を知るためには、法律の専門家の無料相談窓口に相談し、証拠の内容などを詳細に説明した上で、専門家からの見解を仰ぐことが理想的な進め方です。