DVを受けていたと聞いたうえで不倫関係に陥ることがあります。このようなケースで不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、慰謝料の金額を減額することはできるのでしょうか。このようなケースの慰謝料について、よく似た悩みを抱えていた方の相談事例を紹介しながら解説いたします。
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相談に訪れたのは、30代独身女性のAさんです。不倫相手の妻から慰謝料を請求されました。相談に訪れた理由は、「不倫相手からDVを受けていたと聞いていた場合、慰謝料を減額できないか」知りたかったからです。
Aさんの詳しい相談内容は以下の通りです。
「友人から離婚相談を受けていました。最初は友人として話を聞いていたのですが、いつの間にか親密になり肉体関係をもってしまいました。このことが相手の妻にばれて、慰謝料300万円を請求されています。肉体関係をもったことは事実なので慰謝料を請求されることは仕方ないと思うのですが、肉体関係をもつ前に相手から暴力を振るわれているので離婚したいと聞いていました。このような場合、慰謝料を減額することはできないのでしょうか。」
Aさんの疑問に対する回答は以下の通りです。
不倫をすると、不倫をされた配偶者に慰謝料を請求する権利が発生します。慰謝料を請求できる相手は不倫をしていた2人です。配偶者が慰謝料を請求できる理由は、婚姻関係にある2人が平和な婚姻共同生活を維持する権利または法的保護に値する利益を有しているからです。不倫はこれらを侵害する不法行為です。よって、不倫された配偶者は、不倫した2人に対し慰謝料を請求できるのです。
DVで不倫の前に婚姻関係が破綻していると認められる場合、不倫された配偶者は慰謝料を請求できません。婚姻関係の破綻により、平和な婚姻共同生活を維持する権利または法的保護に値する利益を失っていると考えられるからです。ただし、「DV=夫婦生活の破綻」といえるわけではありません。裁判で、DVがあったことと夫婦関係が破綻していたことを立証する必要があります。超えるべきハードルは高いといえます。
仮に、裁判でDVがあったこと、婚姻関係が破綻していたことを立証できなくても、双方の話し合いでDVがあったこと、夫婦関係が円満ではなかったことを指摘して慰謝料の金額を減額できる可能性はあります。
Aさんが、DVで婚姻関係が破綻していたと過失なく信じていた場合も慰謝料請求は認められない可能性があります。慰謝料請求を行うために必要な故意と過失がないからです。ただし、過失がないと認められるには、DVによってできた痣を見た、婚姻関係は破綻していないと思われる事情がなかったなどを満たさなければなりません。裁判で過失がないと認められるのはかなり難しいといえるでしょう。
DVで不倫相手の婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料を払わなくてよい可能性があります。ただし、裁判でDVと婚姻関係の破綻を立証することは難しいといえるでしょう。これらを立証できなくても、双方の話し合いでDVがあったこと、夫婦関係が円満ではなかったことを指摘して慰謝料を減額できる可能性はあります。いずれにせよ、慰謝料の減額には法律的な知識が欠かせません。まずは法律の専門家の無料相談窓口に相談して、最適な解決法を模索することをお勧めします。