時効成立後に慰謝料請求を受けた事例に基づき、慰謝料と時効の関連性と支払義務について解説します。不倫慰謝料請求には時効があり、時効が完成した場合は支払義務が生じませんが、状況により離婚慰謝料が請求される可能性もあります。不要な請求を避けるためには、時効に関する詳しい知識を備えておくことが重要です。
目次
ご相談の経緯についてご紹介します。
依頼人は30代の独身女性です。4年ほど前に会社の上司と3ヵ月間ほど不倫をしていたところ、相手の妻に関係が知られ、ご相談者様と不倫相手、妻の3名で話し合いを行ったそうです。話し合いの際に妻から「関係を解消するのであれば責任を問わない」といわれたため、Aさんは上司との関係を解消しました。しかし、関係を解消した日から3年5か月後に、不倫相手の妻から「離婚に至ったため慰謝料300万円を請求する」旨の内容証明郵便が届いたそうです。Aさんは、不倫の時効について疑問を抱いたため相談に来られたという経緯でした。
今回の事例の解決方法について解説します。
ご相談者様は、時効を援用すると通知しました。時効の援用とは、時効の完成で利益を受ける人が、時効の完成、すなわち利益を受けることを相手に主張することです。交際していた男性の元妻に対し、内容証明郵便で時効の援用についての通知を行うことから対応を行ないました。
また、すでに時効が完成しているため慰謝料の支払も拒否しています。詳しくは後述いたしますが、不倫相手であるご相談者様が責任を負うのは、離婚の慰謝料ではなく不倫の慰謝料です。慰謝料を請求している元妻が、不倫の事実を知り加害者を特定した時点が時効の起算点となることも併せて主張しています。
不倫の「消滅時効」と「除斥期間」について詳しく知っておきましょう。
不倫に対する慰謝料請求の時効は原則3年で完成します。起算日は、不倫が判明して不倫相手を知った日であり、起算日から3年の間に慰謝料を請求していなければ、慰謝料を請求する権利は消滅します。
不倫相手を特定できない場合は、20年間が除斥期間となります。相手を特定できない場合は時効が進行せず、不貞行為があった日から20年と定められている「除斥期間」を経過すると、慰謝料を請求する権利は消滅します。
不倫の慰謝料と離婚の慰謝料は名目が異なることから、時効完成日も異なります。
不倫の慰謝料は、不倫相手を特定した日から3年で完成します。不倫の慰謝料とは、不貞行為により受けた精神的苦痛に対する慰謝料であり、不倫相手の特定日が起算日です。
離婚の慰謝料は、離婚した日から3年で完成します。不倫による離婚の慰謝料とは、不貞行為で離婚に至り受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。離婚をした日が起算日となることから、離婚前に不倫相手を特定している場合、時効が完成するタイミングは不倫の慰謝料よりも遅くなります。
不倫の慰謝料請求において時効が曖昧な場合は、法律の専門家に相談してください。過去の不倫で慰謝料を請求されたときは、消滅時効を鑑みたうえで支払義務の有無を慎重に判断しなければなりません。また、金額の妥当性も評価したい事項です。支払義務や金額の妥当性を判断、評価するには法律の知識が必要です。慰謝料の時効に関する不安があるなら、法律の専門家に相談したうえで、適切な解決法を検討しましょう。